腎臓病では多くの場合、食事療法としてタンパク質や塩分、カリウムなどを制限した食事を摂るよう勧められます。
それはなぜでしょうか?
腎臓の働きや、なぜタンパク質や塩分、カリウムを控えた方がいいのか、食事療法を怠った場合に起こることについてまとめました。
なぜ腎臓病には食事療法が必要なのか
腎臓の役割
腎臓は体の背中側、腰のあたりに左右2個存在する臓器です。
腎臓主な役割は、血液をろ過すること。血液中の老廃物や余分な水分を取り除き、必要な物質は残して、再度吸収するよう促します。
また、血圧を調整する役割や、体に血液を作るよう命令する役割も担っています。体内の水分の量や血圧などを調整し、血をきれいにすることで健康を保っているのです。
腎臓の機能が低下すると起こる症状
腎臓病の症状は、頭痛やむくみ、動悸、倦怠感、疲れやすさなど。
腎臓は体にとって重要な役割を担っているにも関わらず、これといった自覚症状はありません。そのため、気づいた時には腎臓病がかなり進行している場合もあります。
なぜ食事療法が必要なのか
自覚症状の現れにくい腎臓病ですが、腎臓は一度その機能が低下してしまうと、回復が望めない臓器でもあります。
腎臓病が進行し慢性腎不全になると、腎臓の機能を補うための人工透析や、腎臓移植が必要となります。
この腎臓移植や人工透析を避け、腎臓と長く付き合っていくために重要なのが食事療法です。腎臓に負担のかかる食品を避け腎臓を労わることで、症状の進行を遅らせる効果があります。
必要な食事制限とは
タンパク質制限
タンパク質が体内で代謝、消費されると老廃物が残ります。この老廃物は腎臓によってろ過される物質の一つ。たんぱく質の摂取量を抑えることで腎臓の負担軽減に繋がります。
タンパク質の多い食品
肉・魚介類・卵・豆腐や納豆などの大豆製品・ご飯やパスタ、パンなどの穀類
タンパク質の多い食品を控えるには
野菜と一緒に調理し、肉や魚の量を多く見せることで、食事の満足感が得られます。具体的には千切り野菜を肉で包んで調理する、肉や魚を野菜と一緒に串に刺して焼くなど。エビや貝類は殻ごと調理することで大きく見せることも可能です。
忘れがちなのが穀類に含まれるタンパク質です。近年では、タンパク質を減らす加工をしたご飯やパスタも出回っています。
低たんぱく食品を利用することで、制限内で食べられる肉や魚の量が増えるため、物足りなさの解消に繋がります。
塩分制限
腎臓は血圧を適正に保つ役割を担っています。
塩分を過剰に摂取すると血圧が上昇し、腎臓の負担が増すため塩分を控えます。
塩分の多い食品
- 汁物や麺類のスープ
- ソースや醤油などの調味料
- 練り物、加工食品
塩分の多い食品を控えるには
だしやスパイスの香り、酸味や辛味を加えることで薄味の物足りなさを感じにくくなります。
ソースや醤油は食品にかけると量が多くなりがちなので、付けて食べると減塩に繋がります。
スプレータイプの醤油差しも効果的です。加工食品や調味料にも減塩商品が販売されているため、必要に応じて利用しましょう。
カリウム制限
食事でとりすぎたカリウムは腎臓でろ過、排出されます。排出されなかったカリウムは体内に蓄積するため、避けなければなりません。
カリウムの多い食品
- 生野菜
- 海藻
- 芋類
- 乾物など干した食品
カリウムの多い食品を控えるには
カリウムは生野菜に多く含まれていると言われ、カリウムの多い野菜はゆでて、カリウムの溶けだした煮汁を捨てることが推奨されています。(茹でこぼし)
また、以外にカリウムが多いのが芋類。切り干し大根や干しシイタケ、レーズンなどの干した食品も避けたほうがいいでしょう。
食事療法を怠ると
食事制限を怠り腎臓に負担を掛け続けると、慢性的な腎不全になる可能性があります。慢性的な腎不全にまで進行してしまうと、食事療法だけでは療養を続けられず、人工透析が開始されます。
人工透析は週に2~3回通院し、1日4時間かけて体中の血液を機械でろ過する治療法。人工透析開始後も食事制限は続きますし、タンパク質、塩分、カリウムの他、水分の摂取も制限されます。通院は生活の負担なります。
人工透析後の全身の倦怠感ともつきあっていかなければなりません。これは腎臓を移植まで続きますが、腎臓移植のハードルもかなり高いもの。
国内の腎臓移植の待機者は2018年9月の時点で12,007人にも及びます。人工透析や腎臓移植を避けるためにも、食事制限は続けていかなければなりません。
腎臓病の食事療法のまとめ
食事療法が必要な腎臓病は主に糸球体腎炎やネフローゼ症候群、腎不全などです。また、一度機能が低下した腎臓を回復させるには、腎臓を移植するしかありません。
著しく病状が進むと、人工透析によって血液をろ過する継続的な治療が必要になり、心身に負担がかかります。
腎臓病の種類によって制限される栄養や、その摂取可能な量が違いますので、人工透析や腎臓移植を避けるためにも、医師の指示には厳密に従う必要があります。